ボクの目の前には、月と、夜空と、そして、凛々さんがいた……。

【 円 】
「あっ……」

 とろけるように柔らかい月の光。
 辺りを包む青い暗闇が、降り注ぐ金色を飲み込み、わずかながらに綻んだその世界に、彼女は居た。

【凛々】
「……旦那様。動かないでください……。すぐに片づけますから……」

 凛々さんの声は、普段と同じで冷静だった。
 努めて冷静という訳ではなく、自然に冷静だった。

【 円 】
「は、はい……」

 その様子を見てしまうと、弾けんばかりに昂ぶってたボクの鼓動は、やんわりと静まる……。

 言葉のいらない光景だった。
 刀を構える凛々さんは、きっと、これからボクの想像の通りの事をしてくれるのだろう。